不都合なとこが起きても
「かえって良かったんです」
なんてさらりと言ってのける人がいる。負け惜しみだと長年思っていたのだが、どうやら違うことに最近気づいた。というか体験した。この「かえって良かった案件」を人生で早めに経験し、気付き、今後に生かせると人生が豊かになる気がする。
私の「かえって良かった案件」は不動産屋がポンコツだったこと。
ことの始まりは近所の空き地が月極の駐車場になったところから。
その月極駐車場はOPENしてからどんどん埋まっていった。立地最高、お値段お手頃、契約しない理由がない。そんな駐車場だ。ところが残り1台が埋まらなかった。車がない1区画を横目に通勤して二ヶ月近く、さて三ヶ月目に入ろうかというとき、私は月極を管理している不動屋に空きを問い合わせた。この頃、買い替えを検討していた。希望の車種は今の駐車場には収まらないサイズだった。残り1区画が契約できたら購入に弾みがつく。そんな気持ちで電話した。
電話に出たのは若い男性社員。少しやる気のない声。私の問い合わせに、何か調べるような音が聞こえる。キングファイルでもめくっているような音だった。そのあと満車の回答。
私は2ヶ月間ずっと空車なのを知っている。食い下がってみた。家の近所なこと、毎日見ていること、だから絶対空いているということを熱っぽく伝えた。それでも満車の回答。
ぬかに釘とはこの事か。電話を切って少し考え、それから不動産ポータルサイトに空きの確認を入れた。さっき電話応対した声に聞き覚えがあった。あかんタレの奴だと思った。この不動屋には地震保険の代理店として世話になっている。保険更改のとき保険料の説明が二転三転して私を呆れ返えらせた声なのだ。
声の主はあかんタレの適当野郎。そしてポンコツ。それは三日後に証明された。不動産屋から空きがある電話が入ったのだ。今度はベテラン女性社員だった。そのまま契約して現在に至る。
あのポンコツめ。最近までの彼の評価。それが今日、近所のオッサンとの世間話で変わった。私の新しい駐車場が話題になった。そこはオッサンが早々に問い合わせ、満車の回答で諦めたそうなのだ。
恐らく、あかんタレがあらゆる問い合わせをはね返したのだ。私がポータルサイトで契約するあの日まで。そう考えると、あいつがポンコツでかえって良かったと心から思える。
本当に思える
コメントを残す